デザイナーは常に『出来上がったカタチ』を意識しながら、デザインしよう!という記事で、看板のデザインをする際には背景のことを考えてデザインすることが大事だということを書きましたが、たまたま知り合いの看板屋さんと話をしていて、この事の重要性を改めて再認識したのと、さらに勉強になるお話を聞けたので、備忘録という意味も含めて皆さんにシェアしようと思います。
「看板の枠の中だけでデザインをする」という悪い例
看板屋さんと話していて、改めて感じたのは『看板の枠の中だけでデザインをしているデザイナーが意外と多い』という事でした。
どういうことかというと、例えば900mm×1800mmの看板のデザインを作って欲しいという依頼があったとします。それがフレンチレストランのお店の看板だったとしましょう。下が看板の枠の中だけで、デザインをするという悪い例です。
デザインは適当ですが、色違いで2パターンくらい作ったとします。とりあえず、1800mm×900mmの中に必要な情報は入っているので、デザインといえばデザインです。ただ、これで「よし!このデザインで提出してみよう」となってはNG。
僕の部下がこのデザインを提出してきて、「この看板デザイン、どうですか?」なんて聞かれた日には、「何が?」ってなります。「この看板どこにつくの?」「壁の色は何色なの?」「そこまで考えてる?」「それがわからないのに、デザインなんて出来る訳ないじゃん」まで言うと思います(笑)いや、ほんとに。
看板というのは、最終的に紙で終わるものではなくて、どこかの場所に設置されるものなので、デザインするときにもそこまで考えなくてはいけません。看板枠の外側も大事なので、上のデザインだけを見ても判断の仕様がないのです。
看板を設置する場所の写真に合成してイメージを作る
僕がいつもやっているのは、
- 看板を設置する場所の写真を撮影(なるべく正面、比率が変わりずらいので)してきて、その一部分(あとで作業する時にわかりやすい箇所が良い)のサイズをはかる
- 撮影してきた写真をイラストレーター上で実寸の1/10に縮小する
- 画面で作成したデザインを1/10に縮小して合成
という、とても簡単なものです。
下の図を参考。(建物やデザインは適当です)
この状態でデザインを考えると、壁の色、周りの風景、文字の大きさ(看板を設置する高さや人の目線との距離によって可読性が異なる)などを踏まえたベストなデザインをつくることができます。
ここまでやって、初めて「このデザインはどうだろう?」と、なります。ここがスタート地点。
最初に挙げた、悪い例の『決められた看板のサイズと少ない情報だけで作ったデザイン』は、「何の料理かわからないけど、とりあえずイモとニンジンとタマネギを茹でてみました」って言ってるようなもんです。「最終的に何つくりたいの?カレー?それならカレールー入れないと味しないよ!」っていうのと同じです。
さらにステップアップする、看板屋さんからのアドバイス!
ここからが、看板屋さんと話していて目からウロコだったお話。
「看板ってお店の前で立ち止まって正面から見る人よりも、歩きながら斜め45度くらいから見る人の方が圧倒的に多い」
「その看板を見るであろう人の目線が、最も多い状態からのイメージも作っておいた方が良い」という事でした。
この看板の例でいくと、こういうことです。
「なるほど」ですね。
僕も早速、次の看板デザインは斜めからの写真もとって、クライアントに提出しようと思いました。
ここまで用意してクライアントに見せておけば、施工後に「イメージが違った」などのトラブルも少なくなるのと、自分でもイメージがわきやすくなるので、デザインを作るときの参考にもなるのではないかと思います。
これは本当に聞いておいて良かった。
まとめ
『看板だからこの方法、チラシだからこの方法』というよりは、デザインの最終的な状態を想像すれば、おのずとそれぞれの最善の方法が見えてきます。大事なのは、そこまで考えてデザインをしているかどうかという事です。
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