僕は一時期、新聞の原稿をメインで作っていたことがありまして、今までに作った新聞モノクロ原稿の数は、そこらへんのデザイナーさんより多いと自負しております。(だから色もの苦手と言われればそれまで…)
なかには「モノクロ原稿なんて簡単だよ」と思われる方もいるかもしれませんが、意外と奥が深いのがモノクロ原稿。今回はそんな新聞広告について、僕の知っている範囲の知識を備忘録もかねてシェアします。
新聞原稿サイズの呼び方は独特
まずは新聞の広告サイズの呼び名。
雑誌やフリーペーパーの広告サイズは比較的わかりやすいです。基本的には下記の図のように、1ページを何等分かで割って、そのうちのどれだけのスペースを使うかで呼び方が決まります。
それが、新聞やその他タブロイド紙の場合、段数(高さ)+何/何(横)という呼び方が基本。
みなさんご存知かと思いますが、新聞には段数というものがあって、縦組文字が横に長く伸びているひとつのスペースが1段。
で、新聞は基本的にこの1段が縦に15段重なって成り立っています。
15段組と12段組?
ここで、「あれ?自分が読んでいる新聞の段数は12段しかないよ?」と思われた方。そうです、あなたは鋭い。実は12段組の新聞も現在では多数存在するのです。
これは、2008年頃から普及しはじめた『一文字のサイズを大きくして可読性を高める』という名目で始まった、15段組から12段組みへと移行している新聞社が多数存在するからです。
ちなみに、12段組へ移行した新聞社は2014年時点で、すでに半数以上にのぼっているそう。参考記事:紙面段数15段から12段へ 6年で移行社倍増: 今だけ委員長の独りごと
ここで、ふと疑問に思うことがありました。『そういえば新聞って、15段組から12段組に移行してるとこ結構あるけど、広告スペースの呼び方は変わってないよな?』です。
今さらですが、ここはきちんと調べなくてはと思い、知り合いの新聞社(朝日系列)さんに確認をとりました。すると、「あくまでも記事は15段組から12段組に変更しているけど、広告スペース自体は従来通り15段組の呼び名、15段組の時と同じ大きさで統一している」という回答を頂きました。(普段は締切厳守で口うるさいNさん、優しく教えて頂きありがとうございますm(_ _)m )
というのも、新聞業界の広告販売は従来から1段で◯◯◯◯円というのが基本。広告スペースを記事と同じ12段組に合わせてしまうと、以前と同程度の大きさの広告でも、今までより安く売らなくてはいけなくなってしまうのです。なるほど。
下記の図を見てください。記事ベースの4段と広告ベースの5段がほぼ同じ大きさなのがおわかりいただけるでしょうか。
ここでは、さらにわかりやすく『新聞社は1段10,000円で広告を販売したい』と設定しましょう。例えば15段組のときに5段50,000円(1段10,000円×5)で売っていた広告スペースが、12段組をそのまま採用してしまうと、同じ大きさなのに呼び方としては4段となり、値段も40,000円(1段10,000円×4)で販売しなくてはいけなくなってしまうのです。
そうなると、新聞社やその広告を扱っている代理店は損をしてしまうし、新聞広告は継続して出稿しているクライアントが多数いるので、混乱を避けるという意味合いもあって、広告スペースに関してはいまだに15段組を採用しているのかもしれません。
全ての新聞社が採用しているかはわかりませんが、僕が確認した12段組を採用している新聞社の例でいくと、あくまでも広告は今までどおり15段組を採用し、記事に関しては基本12段組み、広告が入るページでは記事を広告のスペースにあわせて調整しているようです。
僕のように10年以上前から新聞広告を扱ってる人なら『新聞は15段で当たり前』っていうイメージがあるから特に疑問に思わないけど、最近の12段組に移行した新聞で初めて新聞原稿にふれるデザイナーさんだと、過去の経緯を知らないと混乱するかもしれませんね。『何で記事が12段組なのに、広告は15段組なの?』って。
で、新聞のサイズと呼び方
前置きが長くなりましたが、これらのことを踏まえてここからが本題。
まず、新聞広告の高さは、先ほどお話したようにこの1段がいくつ重なっているかで表します。そして、横幅に関しては、1ページの横全てを使う場合は「全」という呼び方をします。この「全」を雑誌やフリーペーパーと同じく何/何で割るかで呼び方が変わってくるのです。
例えば、新聞の全面広告は「全15段」。横幅を紙面いっぱいに使って、縦を5段分使った広告は「全5段」、縦が1段分なら「全1段」。
横幅が1/2で縦を5段分使うと「5段1/2」(呼び方は、ごだんにぶんのいち)、3段だと「3段1/2」。横幅が1/4で縦が2段だと「2段1/4」。
このように新聞広告のサイズは、縦何段と横が何/何という組み合わせで呼びます。厳密にいうと、掲載面などによっても独特の呼び方があり、例えばテレビやラジオの番組表が載っているページを「ラテ面」といったり、特定のスペースを「突き出し」と読んだり、とにかく新聞広告の呼び名(スペース)は独特です。詳細はこちら→広告料金早見表 日本経済新聞朝刊全国版料金表(ちなみにこの表に載っていない独自のスペースも新聞社によってたくさんあります)
厳密な入稿サイズは新聞社によって若干誤差があるので、原稿製作前に掲載する新聞社の入稿ガイドを確認するか、実際に新聞社に問い合わせしましょう。
余談ですが、新聞広告を多く扱っている代理店や新聞社などでは、これらの広告スペースを簡略化して業界風に呼び意思の疎通を図ることが多いです。例えば、全15段の場合は「全ペー(ぜんぺー)」。全5段の場合は「全5(ぜんご)」。3段1/2の場合は「半3(はんさん)」。2段1/4の場合は「にいよつ」。1段1/4の場合は「いちよつ」など。
まとめ
本当は新聞で使う写真などについても書こうと思ったんだけど、思ったより長くなったので今回はこのへんで。それにしても、12段組でも広告は15段組を採用してるって、いまさらながら勉強になったな。
続き書きました→新聞広告の印刷で注意する事とワンポイントアドバイス
2段1/4を「2おつ」と聞こえてたので「乙」?のことかと思ってたので、
「2よつ」に納得しました。ありがとうございます。
自分も最初「おつ」と聞こえていたような…笑